ラッカは静かに虐殺されている
シリア内戦のドキュメンタリー映画。ISに支配されたラッカの住民が国内国外で活動し、全世界にラッカの現状とISの非道を伝えようとする。
映像は淡々としているのに、ラッカや国外メンバーに起こっている日常は重苦しく悲惨で悲しい。
そこに住んでいただけなのに、日常を恐怖と狂気で縛られる人。国外に出た同胞の活動で、救われもするし殺されもする。
好きで難民になったわけではなく、平和な自国に帰りたいだけなのに、自分とメンバー、家族が常に死と隣合わせの中活動しないといけない人。
一方、まるで人間ではないように描かれているISもそこに至るまでには何か悲しい事情や怒りがあったのだろう人。
そして難民を恐怖し糾弾する(この国が愛せないなら帰れと主張する)人。この人たちのストレスもわかる。
勧善懲悪では片付けないのがこの世界。
四者の思いは勇気なのか無謀なのか。
思えば有史以来、こんなことの繰り返しで、いったいどれほどの人が無念の中で死んでいったか…。
成熟した人間社会にある「人類は平等、“自分さえ我慢/犠牲になれば収まる”を絶対に選択してはならない」の価値観は、現在起こっている紛争の解決をより難しくしている。
一人一人の四者は当時者として苦しく、救いを待っていて、日々神様に平和をお願いしているのに、時が経てばWikipediaに戦いの規模や犠牲者の数字として書かれることになるのだろう。
悲しい。