unextで見た映画の感想

unextという動画配信サービスで見た映画の感想を中心に書いていきます。

ラッカは静かに虐殺されている

シリア内戦のドキュメンタリー映画。ISに支配されたラッカの住民が国内国外で活動し、全世界にラッカの現状とISの非道を伝えようとする。

映像は淡々としているのに、ラッカや国外メンバーに起こっている日常は重苦しく悲惨で悲しい。

 

そこに住んでいただけなのに、日常を恐怖と狂気で縛られる人。国外に出た同胞の活動で、救われもするし殺されもする。

好きで難民になったわけではなく、平和な自国に帰りたいだけなのに、自分とメンバー、家族が常に死と隣合わせの中活動しないといけない人。

一方、まるで人間ではないように描かれているISもそこに至るまでには何か悲しい事情や怒りがあったのだろう人。

そして難民を恐怖し糾弾する(この国が愛せないなら帰れと主張する)人。この人たちのストレスもわかる。

 

勧善懲悪では片付けないのがこの世界。

四者の思いは勇気なのか無謀なのか。

思えば有史以来、こんなことの繰り返しで、いったいどれほどの人が無念の中で死んでいったか…。

成熟した人間社会にある「人類は平等、“自分さえ我慢/犠牲になれば収まる”を絶対に選択してはならない」の価値観は、現在起こっている紛争の解決をより難しくしている。

一人一人の四者は当時者として苦しく、救いを待っていて、日々神様に平和をお願いしているのに、時が経てばWikipediaに戦いの規模や犠牲者の数字として書かれることになるのだろう。

悲しい。

 

ハンバーガーヒル

久しぶりにベトナム戦争アメリカ兵の、口開けばスケベなことしか言わないような男の子たちが、兵隊としてゴミのように無意味に死んでいくのがひたすらにかわいそう。

意図的に「英雄としてではなくしょうもない死」に撮っている気がする。丘を取ったところで何の達成感もカタストロフィもドラマ性もなく、ひたすらに虚無。アメリカ名物誤爆もある。

“白人と黒人“の対立のような要素もあるけど、それにしたってこんな脆い“人間”の身体を銃器の前に晒すなんてかわいそうすぎる。ベトナム戦争の末路や反戦運動、生きて帰ったその先の苦しみを思うと、ほんとに切ない。この丘がなんだって言うんだ…。

地獄を知らないマスコミに向かって、「お前らより敵のベトナム人の方が好き」というシーンが唯一痛快。

T-34 ナチスが恐れた最強戦車

ロシア版「超高速!参勤交代」。完成したばかりのT -34をお披露目会場まで800km自走して目指すというほんわかロードムービー

もうコメディの粋。

一生懸命頑張って走る健気なT -34(実物で撮影)を眺めるだけでも微笑ましくなっちゃう。

敵のナチスだかオーストリア軍だかが最初騎馬で出てくるので進撃の巨人感がすごかった。

戦火のナージャ

スターリンの顔を特大のケーキにベチャって押し付けちゃう背筋の凍るホラーシーンから始まる(主人公の見た悪夢)実は三部作の真ん中。

どうしようもないポンコツソ連軍とド畜生のドイツ軍が殺しあう独ソ戦悲惨の詰め合わせみたいな映画。ショッキングなシーンが多いので、戦争映画苦手な人は注意しましょう。

ロシア映画なんだからドイツ軍(ナチス)がど畜生なのは仕方がないとして、主人公側のソ連側もかっこよくは描かれていないというか、親玉(スターリン)は最悪、上官も馬鹿、一般兵は哀れ、という悲惨さでアメリカの戦争映画にはない凄みがあります。自国びいきな感じがしないというか、本当にコントみたいな些細なことで人がいっぱい死ぬ。

ナチス側は「全体としては極めてド畜生」なのだけど、個人は別にそこまでの悪ではないというか、仕方ない要素もあり、引いた画で観ると畜生になる構図がすごい。

ソ連は第二次世界対戦の軍人の死者が1360万人という(日本は230万人)ケタ違いの損害を出した理由がよくわかる。


ベテラン含む懲罰部隊にピッカピカのエリートちゃん達が派遣されて一緒に戦うとどうなると思いますか…?アメリカ映画なら、ベテランが良い感じに引っ張ってくれるでしょうけど、残念ながらこれはロシア映画。ベテランもエリートちゃんも等しく玉砕。240人いて残ったのは数人(うち一人は腸がはみ出している)。もう命のない兵士がつけている腕時計の音が、静寂に響く画や、両足がないのに意識のある兵隊が、呆然と瞬きをしながら周りの遺体とともにどんどん雪に埋もれていく画は圧巻。戦争という人間の業の、ある意味「美しさ」を感じる。


最後の今にも死にそうな兵隊さんが、看護婦であるヒロインに「キスもしたことない、おっぱいも見たことないから見せて」と頼み、もたもた脱いでいくところを血気迫るうっとりさで見守りながら生き絶える。彼がおっぱい見れたかどうかわからない。


NGT48のウラジオストクでのプロモーションビデオはこの映画のオマージュ的な要素があるのかな。ナージャーって名前を呼ぶところ。


unextでUコインやUポイント(有料)ではなく、見放題(月額費用内)の方で視聴できました。

ハクソーリッジ

沖縄戦、前田高地の戦いを描いた米軍vs日本軍の話。沖縄戦ものでは大体日本軍(民間人含む)がボロ負けしてアメリカ軍強すぎって印象のものが多くてとにかく悲壮だったけど、この映画は日本軍超強いし超怖い。日本兵もめちゃくちゃ死ぬが、アメリカ兵もめちゃくちゃ死ぬ。日本兵はどっちかというとベトナム戦争のゲリラみたいで、人員も豊富、銃も一人一丁持ってて弾薬も充分あって今までのイメージとかなり違った。

 

最初は遠足気分で歌とか歌ってた主人公達が前線から戻ってきた前任部隊の負傷兵や死体を見て、自分たちのそう遠くない未来を思うシーンがいたたまれない。ハクソーリッジ(ほぼ垂直の壁)そのものは、登るだけならハンバーガヒルのようなことはないのだけど、登った後は前任部隊の遺体(腕も足も顔も肉片になって内臓がぶちまけられている)が散乱しています。海軍が砲撃したのにこういう遺体は燃えてないんですね。

 

その中を進んでいく主人公達の部隊。

そしてせっかく戻ってきたのにもう一回登ろうとする男達…。なんでこんな怖いことを命令だからってやらないといけないんだろう!

 

フィールドが狭いせいか歩兵の皆さんが掴みかかって戦うようなぐちゃぐちゃの戦闘で、主人公以外は画面に映る人はすぐに死ぬか撃たれる。怪我の描写(ゴア表現)は今まで見た戦争映画一で、損傷が激しくスプラッター状態(主にアメリカ兵)。

 

主人公の信念はすごいけど、個人的に主人公の信念を認めた周りの仲間もすごい。主人公はちょっと頭のネジが変なので。フルメタル・ジャケットの微笑みデブは最初は普通だったのが後々おかしくなるが、主人公は最初からちょっと変。

 

これはアメリカの映画なので日本兵へも掘り下げは責任者の切腹シーンぐらいで、あとはほんとドライに「敵」みたいな感じ。反日要素は無い。でもいやらしさのある日本軍ヘイトはほとんど感じられない。アメリカ産の戦争映画特有の価値観はあるものの、それはいつものことだし神と英雄が大好きな彼らのそれはジメジメしてなくていい。

アメリカ人のこういうところが嫌いではない。

 

この映画は日本公開時(2017/6/24)に舞台が沖縄戦であることを伏せて宣伝されたらしい。激戦の部隊になった現浦添市(当時は住民の4割が死亡)の姿勢が冷静で「浦添で起こったこと自体が重要なのではなく、映画という入り口から、多くの方に平和についてあらためて考えてほしい」のコメントが胸をうつ。しかし公開日は冬にするとか、もうちょっとなんとかならなかったのか…(沖縄戦終了日の翌日)

 

作中に両足が吹き飛んでぐちゃぐちゃのミンチになっている兵隊さん(ラルフ)が出てきて、どうやってこの足を特殊メイクしているんだろうと思っていたら、実際に戦争で足を失った退役軍人が演じているそうです。オファーを受けるこの人も凄いけど、オファーする方も凄い。


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硫黄島からの手紙

硫黄島の攻防は30日以上あったはずだけど、初戦から栗林中将の死まで3日くらいの時間感覚だった。父親たちの星条旗を先に見たので、あの上陸戦の時の日本側はこうだったのだなあとか、アメリカ本土の豊かさに比べて日本家屋貧相だなあとか色々比較できて面白い。

パン屋さんが無能な上司に強制されて手榴弾で自害する仲間を見ているシーンは次は自分かと見ている方も緊張してしまって感情移入が凄い。硫黄島も一応東京都、日本の一部だから、南の島で散っていった兵に比べたらマシな方だったんだろうか。

 

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父親たちの星条旗

戦費が底を尽き、国債を国民にいっぱい買ってもらうために「英雄」が必要でしょうがなかったアメリカという国の物語。7月4日に生まれて、ジョニーは戦場へ行ったあたりと似た主題か。

アメリカは余裕綽々で戦費も装備も常に充実してたんだと思い込んでいたので、戦費がすっからかんでやべえ国債頑張って売るぞ!となっていたとは知らなかった(それでも日本よりは100倍くらい豊かだけど)

戦闘シーンは銃撃・砲撃が中心で相手(日本兵)の姿はあまり見えないので、そこまで残酷ではない(ハクソーリッジ の方が酷い)。

国債販促ツアーに回らされる二十歳そこそこの米兵の胸中が可哀想でつらい。列車で帰ってきて住人の歓迎を受けるシーンでは、戦死した他の人や、相手(日本人)もどれだけこんな風に祝福されて帰りたかっただろうと思うと泣ける。

でも帰れたからと行って幸せとも限らなくて…。

米兵は身体が大きいので何となく成熟した大人の男っぽいイメージがしてましたが、実際は若い人が多いんだなあ。

硫黄島や沖縄で日本が算出されうる抵抗の5倍で奮闘してアメリカに想像以上の被害を出してしまったため、本土決戦で自国の兵を上陸させることを嫌がり、それが後の二大悲劇に繋がっていくという…。

現在の硫黄島は基本的に一般人の立ち入りは禁止だけど、時々リゾートバイトのようなノリで自衛隊の基地でのアルバイトが募集されているようです。


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