二百三高地
1980年製の映画。なかなか戦闘シーンに迫力があって見応えがある。細かいことを言うとどうも「お化け屋敷」的なノリが気になる。動く地図とナレーションと味のあるテロップがすごくいい。
バルチック艦隊はあんなヘロヘロの状態でも脅威だったんだなあ。
終始日本側は負けっぱなしで、劇中ずっと勝てるわけないといわれ続けていて、203高地だけなんで成功したのか、具体的な作戦はよくわからず。
単に死力を尽くしたっていうなら、最初から頑張ってたと思うし。
戦地では、目的地にたどり着いて旗を掲げられる兵はほんの一握りで、あとは生物の生存競争が如く死んでいく。男性諸君には生まれる前に何か似たような思い出があるのか。
程よくロシア側にもリスペクトがあって、休戦のエピソードで物品を受け取り、ありがとうって言ってるシーンが好き。次男の戦死を聞いた乃木さんが影の中でカタカタ震える演出が良い。
主人公はロシア好きで友好を信じていたのに、凄惨な戦場で部下を失った悲しみから徐々に変化していくのが、驚き(いまの映画だったら最後までいい人のままだと思うので)。
お豆腐屋さんとヤクザさんは帰ってこれてよかったけど、この後の戦争(第一次、第二次世界大戦)にはどう関わっていったんだろうね。
大局を見ればまぐれで勝ったような日露戦争ですが、現場での将兵はあんなに一生懸命戦ったんだなあ。ところでうちの母方の曾祖父さんは、日露戦争の頃サーベルを帯刀するような将校さんだったらしいけど、詳細は不明。
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チェチェン包囲網
敵味方が一時的に交流するものが大好物で、あらすじを見てたのしみにしていたものの、ちょっと肩透かし。戦争映画というかヒューマンドラマで、激しい戦闘シーンはありません。チェチェン人捕虜のジュマールと二人のロシア人(典型的な真面目とお調子者のコンビ)が延々歩いている。
ジュマールは作中で「美しい」という設定で(わたしから見ればロシア人も十分美しいので飛び抜けているようには見えませんでしたが、線の細い美少年感。)最後にはロシア側の危機もあってジュマールを殺してしまう主人公ですが、彼への扱いの優しさの根拠を思うと、愛だったのか…。
ロシア→チェチェンはともかく、チェチェン→ロシアは理解するに至るのか、その背景(ジュマールの気持ち)はわかりませんでした。
戦争がなければ仲良く出来る人たちが、そうでなくなる瞬間が切ない。
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野火
基本的に日本側は死体か、死にかけの人しか出てこず、お国のためとかいう崇高な精神や理論は消えてしまっている。生きながら地獄の入り口を彷徨っている感じで、死体との差があまりない感じ。
火を起こすのは人間だけ。野に火があれば、食事を取るための人間がそこにいる。その、駆け寄りたいような恐ろしいような気持ち……。
グロければ悲惨、悲惨であれば反戦というのは違うと思う。ただ、日本中のご先祖さまたちが今のわたしより若い頃に、南の島でこんな風に死んでいったのだなあと思うと可哀想で可哀想で仕方がない。
どんなに家に帰りたかっただろう。
どんなにお米の美味しいおにぎりを食べてからいきたかっただろう。
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さとうきび畑の唄
本当は映画ではなく特番のドラマ。
起承転結がスムーズで、人物も王道的でわかりやすい。戦争前の沖縄の姿も観れる。
特筆すべき点は、
・ガマから民間人を追い出そうとして主人公の機転で回避できる(軍が折れる)
・投降せずに自決しようという声が軍からの強制ではなく民間人側から自発的に上がる
・赤ちゃんの泣き声を止めろと言われる状況(敵に見つかる)が視聴者側に理解できる
・ノボルの価値観が作中で否定されない
これがどう凄いのかというと非常にセンシティブな問題なので明確に書けないのだけど。
このドラマは沖縄戦の悲惨さの、1000分の1も表現されてはいないだろう。
でもミクロ的な目線で、自分の家族がバラバラになるということ、帰りたい家があるのにその未練を断ち切って飛び出さなければいけない辛さ、自分の家が、職場が燃えてしまったショックが「等身大」で伝わってくる。かつてこんなどこにでもいそうな平凡な家庭が戦争に対面したんだ…本当に…。
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フューリー
ブラピが主演のvsナチスの戦車戦映画。
私が女だからか、個人的に登場する男性陣は全員クズで好感度が誰にもない。でもキャラクター的にはカッコいい人も、切ない人もいた。
もともとは普通の人だった彼ら……戦争なんだから彼らがああいうクズにならざるを得ないのは仕方ないことなんだ。
◾️いいところ
・対戦車戦(打ち合い、まるで剣客同士の戦いみたいな一対一のバトル。決闘みたい)
・思ったより頑丈な戦車
・見たことのなかった戦車の内側の様子。
・いちばん危険な場所にリーダー(ブラピ)が座って指示する(戦車長ポジ)のカッコいい!
・ノーマンが捕虜射殺を断固拒否してブラピと取っ組み合いの団子状態になって引き金を引かされるところ(仕方なくではなく断固拒否して暴れまわる男の子っぷり)
・ノーマンを助けてくれるのがSS(作中で一番の敵)の若い兵
・ナチス側も祖国のためにというし、「奴ら(ドイツ)はなぜ降伏しないんだ」と憤る上官に「大尉なら?」というブラピ
・ブラピが戦争前からドイツ語ができる、聖書をかなり読み込んでいる(普段は知ってそうに見えない)、アフリカから戦地を転線してきた、自分の戦車にフューリー(激怒)という名前をつけている……ことから察すると相当相当相当に嫌な経験ばっかりして我慢して我慢して我慢してここまで来たベテランと思われる。ノーマンに捕虜を殺させるシーンやSSへの強い怒りはそういった過去が行動させるのだろう。
ナチスドイツのデザインにみんな心惹かれるのは、軍服をファッションとしてカッコよくデザインしようという意思でカッコよくデザインしてるから、カッコよく見えて好きになっちゃうのはしょうがない。それを細身長身金髪でインテリっぽい美形のお兄さんが着ちゃうんだからカッコよくないわけがない。
◾️良くなかったところ
・民家の女性とのシーン
自分の家に敵国の汚らしい兵隊が上がりこんでくることに嫌悪感を抱かない人がいるだろうか
・ラストバトルが戦車戦じゃなくもはや籠城戦でドイツ兵が「技術<<<<<<数(しかもばか)」なところ。SS大隊のはずなのに。
・いや、森に隠れてやり過ごして体制整えてから再出撃できるでしょ。玉砕覚悟って日本軍なの、君たち米軍でしょ。
たった数日で純粋な青年ノーマンが戦争ハイの中で人が殺せる人間になっていく。
彼の中でだんだんドイツ兵を殺していい理由が蓄積されていき、チームの中で同じ戦う男として認められる嬉しさ(「陸軍へようこそ」「最高の仕事だ」)、仲間(最初は異常に見えた)との連帯感や上司への尊敬から戦争で人を殺すことが肯定されていく。
しかし、最後にノーマンの命を救った(気付いたのに見逃してくれた)のは敵のSS(作中最大の敵であり嫌悪相手)の若い兵。
あれは初期のノーマンなんだよね。
自分はたった数日で変わってしまった。
それが正しいことだと思い込んで自分を守ろうとしていた。あれほど嫌悪し憎悪した価値観に染まり、いつの間にかいかれていた。そうしなければ生きられなかった。
おそらく、ドイツ人の少女が死んだ時に早く戦車に乗れと言ってノーマンから「人の心がないのか!」的に反発された兵士は、かつてノーマンと同じように理不尽な戦争に怒り苦しんで来たんだろう。だから仲直りの時に言ったのは、かつての自分に謝ったように思える。
ノーマンも無抵抗の兵を殺すことをよしとしない自分(SSの若い兵)に救われる。
人を殺していいことの、否定。
戦争を男の最高に誇らしい仕事、と描きながらも最後に全否定する。やっぱり人を殺せない方が正常だと。
英雄と讃えられて救出されたノーマンの心に去来するものは、失った仲間のことよりも失った「自分」への思いだったのではないだろうか。
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